2021.10.23（土）エマルジョンと一途

　抜歯後のまだ埋まらぬ穴を舌で撫でると、なぜか少し甘い。甘い味がすると言い切れるほどではないけれど、クッキーの周囲2mmくらいに漂う甘さを舌先に感じる。焼き菓子をひたすらに食べるから、バターと小麦粉と唾液がエマルジョンして歯肉の奥深くに練り込まれたのかも知れない。ご飯粒３つを収納できる不思議な甘い穴は今日も健在だ。

　今日は我が家のカワ犬こと一途（イット）さんのシャンプー日なので、昼前に実家に帰る。先日友人に犬の名前を尋ねられ、一途（イット）という名前と由来と想いを根こそぎ語った重めのLINEをした。友人からの「重めの名前を付けられた、お犬。呪いかな」という返答に、平安時代の陰陽師の一句みたいだなと思いながら少し頷いた。確かに重めだ。祝いのつもりでつけた名前だけど、過分な思いで呪いに転じないよう気をつけなければいけない。

　実家に着いてこっそりとリビングに入り込む。静かに、カワ犬に気付かれないように荷物を置く。動画アプリを起動して気付かず布団に包まるカワ犬に近付く。かわいい。目の前にかわいいが佇んでいる。グッドスリープ眠っているから頬を叩いて起こすと、寝ぼけまなこのままこちはに向かってくる。愛らしいったらありゃしない。一途に育てますという想いと、それを一身に受け一途にこちらに身を委ねるカワ犬。ギブアンドテイクでwin-winなPDCAサイクルをひたすら回す。

　昼過ぎに車に乗ってカワ犬をシャンプーに連れて行く。お店に着くまではふんふんふんふん言って怯えてるのに、着いて車から降りた瞬間、一目散に入り口に駆けていく。店に入ったら入ったで、飼い主そっちのけでサロンのある階段を駆け上がっていく。よほど快適なのか楽しいことがあるのか、今日も寂しくなるくらいに無視されて取り残された。会計だけを一人で済ます。

BGM：STUTS「Changes」