2021.10.4(月)歯、一つ分の穴
夕方、生え方と近隣の磨きにくさの為に健康な歯を抜いた。左上の中ほどに歯一つ分の穴が空いている。
前から後ろに緩やかにカーブしながらずらっと並ぶ永久歯。その左奥歯の一個手前に仲良く横並びになった二本の歯がある。伝わるだろうか。ラメーン屋にずらーっと並んだ一列の行列、そこに突然二人組が現れて前後見てもそこだけ二列になってるみたいなやつ。ほら、あれってあそこだけはみ出っから邪魔なんですよね。周り見て一列に並べよ。ってなるやつ。あれが僕の口腔内左上真ん中らへんで物心ついた時から起きている。
横並びの二列の歯と後ろの奥歯が三角地帯を作って、まるで一つの大きな奥歯みたいになって、そこが磨きにくくて、時々少し腫れたりするのが気になっていた。
時間が空いたので横並びの歯たちと決着をつけるべく、15年振りに歯医者に行ったのが先々週の話。結局虫歯にはなっていなかったけれど、磨きにくくて腫れたりするのを解消するにはやっぱり抜くしかないらしい。で、抜くことに決めて今日に至った。
自分では頬側の歯は歯並びとして綺麗なので、抜くのは舌側に生えている歯だと思い込んでいたが、どうやら噛み合わせの重要さや虫歯の様子などで決めるらしい。さっそく「噛み合わせ見るので噛んで下さーい。」と言われて噛み合わせを見せて、「あーどっちも同じバランスだねー」と言われる。あーそんなとこまで仲が良かったんだね。なんて感傷虚しく、ドクター同士で相談した上で舌側の歯を抜くことになった。
どうやら健康な歯なので虫歯のように簡単には抜けないらしい。そう言えば親知らずを4本抜いた時も、退化せずめちゃくちゃ元気に根を広げていたのでゴリッゴリに歯を動かし回してやっと抜けたのを思い出す。あれは辛かった。麻酔で親知らず周囲に痛みはないのだけれど、親知らずを挟んでグワングワンさせた器具が口角やら口唇やらにぶつかって挟んで圧迫してメチャクチャだった。あれ、ほんと死ぬほど辛かった。あんなのはもう嫌だ。でも、なったらなったでがんばるか。と覚悟を決めている間に、麻酔が終わる。今の歯医者って麻酔も全然痛くなくてビックリする。みるみる左の頬くらいまで痺れてきて、治療が始まる。で、やっぱりなかなか抜けなくて、ドクターの熱が器具を通して歯から骨に伝わる。麻酔で痛くはないけれど、歯に続く骨の軋みが頬骨に響く。器具をぐりぐりしだしたので、これは歯と器具の間に唇が挟まったら大惨事だと大きく口を開ける。ミシッ、ミシッ、ギギ、ギ。なんて体感で30分くらいこねくり回された程で、器具にかかる力が抜けて安堵を感じる。健康な歯が抜けた。
「終わりました。やっぱり丈夫で時間がかかってしまいました。」とそこには幹の付いたネイルサンプルみたいな綺麗な歯があった。
ごめんね、健康な歯。さようなら。本当は上の歯なので地面に埋めてあげたかったけれど、くれる雰囲気が全くなかったのでここでお別れするね。
ずっと昔からいつの間にか仲良くぴったり並んでいたはずなのに、ひとつがぽっかり穴になっている。凄く磨きやすくなったけれど、健康なのに抜かれることになった歯を思うと、申し訳ない気分になった。
BGM:iri「会いたいわ」
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