誰にでもある、溢れては掬われる話

年が明けて、唐突に、10年くらい連絡をとっていない友人に連絡をしてみた。


彼女と出会ったのは、高校卒業後に進学した専門学校だった。

学科は違ったけれど、休憩の合間や共通科目で話すうちにいつの間にか仲良くなっていた。会えば(彼女の)彼氏の話で盛り上がり、当時の彼にまつわる話は、それだけでご飯が何膳も食べられるくらい僕の大好物だった。


大好物と言えば、時折彼女のお母さんが唐揚げをたらふく作って差し入れてくれた。一人暮らしの僕にとって、コンビニ弁当ではないあの唐揚げは本当に美味しく嬉しかった。

ありがとうございます、胃袋に染み渡りました。


懐かしい。時間があればいくらでもあの頃の話ができる。あぁ、あの頃の話がしたいなぁ。


彼女と連絡を取らなくなったのに、特に理由はない。

なんとなく、いつの間にか生活から溢れていった人や物事がたくさんある。

何かの拍子に思い出して、繋ぎ合わせたいけど、なんとなくそのままにしている人や物事。


今までも年に何回か連絡を取ろうかと思うのだけれど、登録されている電話番号とアドレスが今も繋がるのかわからず、日々の忙しさを理由に結局連絡せずにいた。


(なぜメールをしてみるだけの事をしなかったんだろう。という事を深掘りしてみたけれど、なんか気分じゃないので書いて消した)


その日はなぜか、本を読んでいる途中で思い付き、気付くとiPhoneに残るそのアドレスにメールをしていた。「届くのか!」という件名と、本文には僕の名前のみを入れたメール。幸い送信エラーを伝えるデーモンからの即レスはなく、ちょっとした安堵と期待が込み上げる。送信した後、返信を待って居ても立っても居られなくなるお年頃では無いので、読みかけの本を読み始めた。


少ししてやっと本に集中し始めた頃、iPhoneに着信がが表示された。


メール:「うぉぉぉ!〇◯(彼女の名前)に届きました!!」


たった1行の本文で、僕の人生のフィルムのあの時と今がΩになってくっ付いた。

時間を感じさせない会話。他愛も無い、他愛な会話。

僕が時折あの頃の彼氏の話を挟んで、懐かしいね〜って笑い合う。

お互いあの頃とは違うけど、全然変わらない部分で繋がる会話。


うん、連絡してよかった。こんな時だから、連絡してよかった。

落ち着いたら会おうと約束をして、フィルムがまた回り出す。

会う時には唐揚げお願いしようかな。


オチはないけどね、すごく良かったお年始の出来事。


僕が特に好きな当時の彼氏の話は、彼の家で便座が冷たかったと言って一眠りし目覚めたらトイレが最新のウォシュレットになっていた話と、別れた後に土砂降りの中でメロンを持った彼が実家の窓の下に立っていた話。


BGM:くるり「THANK YOU MY GIRL」

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