席替えは、祭りごとです、政(まつりごと)

何気なく入った教室で、少年少女達の雰囲気がなんとなくいつもと違うのを感じました。

何でしょう。どことなく高揚した、それでいて僅かに緊張感で汗ばむこの雰囲気。

なんて勝手に感じていたら、うん、すぐに分かりました。

この後に席替えがあったそうなんです。

おう、席替えか。そりゃー、あの雰囲気になっちゃうよね。わかる、わかるよー。

なんて、本当は全く思いませんでした。

だって、席替えってとうの昔に忘れていた行事なんですもの。

席って不都合がなければ私は気にしないし、何ならその行為自体が面倒…。


なんて擦れ切った私でしたが、あの雰囲気が印象的で、夜にふと席替えについて考えちゃいました。そしたら、ふっと思い出しました。割と席替えに情熱的というか、人知れず席替えの鬼だったあの頃の記憶。


運ではない、全ては交渉なのだ

今思い返すと、私はここと決めた席には必ず座ってきた自信があります。

それも強かに、誰にも気付かれず、何食わぬ顔で。


そもそも皆さんは席替えをどう決めていましたか?

そろそろ限界で次のステップへと噂される民主主義での話し合いですか?

それとも万人が公平であれとくじ引きか何かですか?

そのくじ引きと交渉の二つのハイブリットですか?

もしくは日本古来から伝わる易での吉兆や風水を持ち寄ってですか?

こう思うと懐かしくないですか? 席替え。

もうこの時点で若干エモさに浸ってたりします。私。


私の経験ではくじ引きをした後、各自で交渉ありのハイブリット方式が多かったです。

運に身を委ねるなんて言っておきながら、色々な想いが交錯するあの方式です。

「ねーあっちゃん!謙二くんの隣変わってもらいなよー。私、薫に言ってあげる!」やら、

「俺、別にお前の隣が良くて変わったわけじゃねーよ。目ー悪くて前来ただけだから」やら、

んー甘塩っぱいったらありゃしない。たった座席のことなのに、そこは正に人生の交差点。


どうですか?思い出してエモくなってきませんか?

そんな席替えの鬼は思い出しました。


まずはくじ引きの段階でアレをするんです。思いっきり祈る。

もうしょっぱなから神頼みです。なりふり構っていられませんから。

ただ私の神への祈りは一味違います。

私の祈りは「どうかあの席に。いや、あの人の近くの席に。いやいや、もしそれがおこがましいとおっしゃるなら……あの人の近くに目の悪いあの子を座らせて下さい。もしくはこの前漫画を汚して返してきたこの子を配置して下さい。もしくはお菓子にすぐ釣られるその子とかをあそこら辺に。それか……」と一番大きな願いを祈りつつ、徐々に小さな要求を具体的にお願いするんです。

はい、これはかの有名なビジネス交渉術『ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック』です。

席替えの神を前に交渉するんです。

はい、このテクニックはテストに出ます。


そして、ここからは人との交渉、それは戦略

くじ引きで決まった座席。席替え神との交渉の末に掴んだ座席。

ここで全ての要求が通り、次のフェーズに至る事なく勝負が決まることもあります。

ただ、やはりここは神との交渉結果、時に非情で無情に教卓の真ん前なんていう試練を与えられることもあります。否、ありました。

そんな時にでも、私は決して諦めませんでした。

むしろここからは人との交渉のフェーズ。今まで神との交渉をしていた私にとってはお遊びでしかありません。決して焦る事なく、まずは呼吸を整えます。


素人であれば、ここでまずお目当ての座席の主に直に交渉することと思います。

ですが、下心を前面にした愚かな面構えの交渉など誰が乗りましょう。

そんなことをしては断られるのは当たり前、場合によっては不利な交渉を持ちかけられしばらく焼きそばパンを奢るハメになるかも知れません。


そこで私はまずこうします。呼吸を整えた後、引き詰められた座席を高みからで見るのです。

そう、座席というなの碁盤を俯瞰で見るんです。そして支配するんです。

そう、碁盤の神になるのです。そうすると自然と見えてきます。

座席という星を巡りあの人へと辿り着く最短の詰みの形が!!


ふぅ、皆さんついてきています?


急いで目的に、一直線に行く必要はないんです。

よく考えて、日頃から盤面を俯瞰で見て、そして焦らず確実に一手を繋げていけば、自ずと目指すところに辿り着けるんです。

どうですか、席替えに見る戦略。席替えにみる無限の宇宙。

神席は一日にして成らず

ただ、無限の宇宙で神の一手を指すには相当な修練が必要です。

一日にしてはそれは成りません。なので地道な活動が必要に成ります。


日々の地道なロビー活動が一手、また一手と道を作り、神の一手となるのです。

レバーを狙って下さい。強かにジワジワと効かせていきましょう。

「ねぇ、俺の席と交換しない?俺もそこがいいし、君もあそこが友達と近いでしょう」

この一手を確実にするために、日頃から笑顔で多くの人と関わり、対話し、時に少しの我慢をし、そうして道を作って行きましょう。

いつもニコニコ自分の機嫌をとっておくと、いざ席替えの時に救われるはずです。


そう思うとほら、神様が試練を与えても、日頃から頑張っている人は報われる気がするでしょう。誰かが見てくれていると思ったら。頑張れることもあるでしょう。


だから誠実に頑張っている人は応援しますから、日々積み重ねましょう。

時々怠けちゃうこともあるけれど、失敗しちゃったり、間違ったりもしちゃうけど、やり直せないことなんてないし、応援するからいっしょに頑張りましょう。

いつか自分にとっての神席をもぎ取るために。


席替えのあの気持ち、存分に楽しんで〜。

※はじめの写真は神の一手


BGM:大森靖子「S.O.S.F.余命二年」

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